イラストレーター 田中未樹 イラストレーター 田中未樹

田中未樹の住友グループ探訪
住友建機
千葉工場

世界中で活躍する油圧ショベルをはじめとする建設機械を生産する住友建機。建設機械は建設作業から災害復旧、解体による資源循環まで社会インフラの維持に不可欠な縁の下の力持ちだ。千葉市稲毛区にある国内主力拠点の千葉工場では、1日平均40台の様々なモデルの重機が生産されている。
この工場では精緻な技術を身に付けた社員たちが溶接、加工、塗装、組立という4つの工程を手際よく作業している。多品種少量生産の平準化と品質保証を両立させた現場を訪ねた。

住友建機の国内主力生産拠点である千葉工場の生産ライン。1日約40台の建機がこの工場から生まれる。

イラスト: 住友建機千葉工場の坂本さん。好きな言葉は「安全第一」

住友重機械工業の千葉製造所と並んで千葉工場がある。
1975年から油圧式ショベルの製造を開始し、2025年で50周年を迎えた。

住宅地を抜けて工業地帯に入った辺りまで来ると、住友重機械工業グループの一員である住友建機の千葉工場が見えてきた。正門から入ると、同社が1969年に初めて開発・販売した油圧ショベル「LS-25000ALJ」が展示されている。現場で一生懸命働いてきたその姿は誇らしげに見えた。

「住友建機は年間8000台から9000台の油圧ショベルやアスファルトフィニッシャを生産しています。千葉工場は現在、小型から大型まですべての油圧ショベルを製造する国内唯一の油圧ショベル生産拠点(マザー工場)です。2025年6月ごろから神奈川県の横須賀工場の立ち上げが始まり、主に35~80t級の大型ショベルが移管される予定です。2028年には国内2拠点、海外は中国とインドネシアという生産体制になります」と生産本部製造部の千葉製造課長兼製造企画課長の坂本慶輔さんが説明してくれた。

ヘルメットと作業服、防護マスクを身に着けて、坂本さんの案内で工場を見学させてもらった。千葉工場では、7.5t級から80t級までを生産しており、異なるサイズのモデルが同一生産ラインを流れる。同じモデルを大量生産する自動車メーカーの場合は、作業の平準化やロボット導入による自動化で生産効率を高めるのが一般的だが、多品種を少量生産する千葉工場では通用しないそうだ。

「当工場では1工程を14分で進めるルールがあります。1日に約40台を生産するために作業工程を分解した結果、生まれたのが14分という作業時間です。重機のモデルやサイズが違えば同じ作業工程でも時間は異なり、大型機の作業は14分に収まらないこともあります。大きな機種の次は小さい機種を流し、前後の工程を含めてトータルで作業時間を平準化する発想で生産計画を組み立てています」(坂本さん)

製造現場の3工程を手描き風イラストで示した図。左は『小部品組付け』で、モデルごとに異なる部品を選び作業を変える様子。中央は『組立』で、120工程を複数人で作業し、14分で次の工程へ進む様子。右は『溶接』で、ロボットと人が分担し、細かな部分は人の手で行う様子を描いている。 製造現場の3工程を手描き風イラストで示した図。左は『小部品組付け』で、モデルごとに異なる部品を選び作業を変える様子。中央は『組立』で、120工程を複数人で作業し、14分で次の工程へ進む様子。右は『溶接』で、ロボットと人が分担し、細かな部分は人の手で行う様子を描いている。

生産工程は大きく「溶接」「加工」「塗装」「組立」という4つに分かれている。それぞれが大切な作業で、中でも重要なのが溶接だという。溶接の品質が低ければ、重量のある土砂の掘削、積み込み、建物の解体などを行う現場での事故につながりかねない。「千葉工場で働くのはベテランの社員ばかりではありません。男女を問わず新入社員や中途採用者、外国人の技能実習生など様々です」と坂本さんは話す。

高い品質を維持しながらこれだけ多くの重機を生産するためには、社員全員が熟練した技能を身に付ける必要がある。そのため、千葉工場では、工程ごとに「溶接道場」「加工塾」「組立アカデミー」という3本立ての技能育成の仕組みを整えている。「新しい作業者は研修で基礎的なことを学び、現場に配置されます。1つの作業工程を覚えるには最低でも3カ月かかり、ベテランの社員がサポートについて新人の技能向上と生産品質の維持を両立しています」と坂本さんは説明する。

人の感覚と技能に頼るばかりではない。例えば組立工程のボルト締結はきちんと作業できているように見えても、ボルトの溝に異物が入り込んでいれば締め付けの強度不足になり、後に深刻な事故を引き起こす恐れがある。上下構造の結合部や、後部の重りとなるカウンターウェイト取り付け部など、外れると特に危険な箇所は「重要締結」として、トルク(軸を中心にねじる力)や締め付け開始後の回転角度、締め付けに要した時間も合わせた3要素で自動判定する仕組みを導入している。1台ごとに履歴を保存し、万が一トラブルが起きた時に追跡可能にしているそうだ。

建物の外では組み立てが終わった建機の動作確認が行われている。大きな腕を上下に振ったり、運転台を回転させたり、真新しいクローラーで走行したりする姿は圧巻だ。「動作チェックが終わった建機は広いスペースに並べられます。住友建機独自の伝統的な黄色の油圧ショベルや、明るいオレンジ色の欧州向け、北米を中心に展開する赤色のリンクベルトなど、様々な色の建機が静かに出荷を待ちます」と坂本さんは話す。主に海外向けの腕の先のショベル(バケット)は、顧客のニーズに合わせて出荷先で取り付けるのが一般的なため、工場ではまだ装着されないそうだ。建機が1台ずつ生まれる工程を見て、建設現場などで活躍する姿を見る目が変わってくるように感じた。

性能検査を終えて出荷待ちの建設機械が並んでいるイラスト。さまざまな色やモデルのショベルカーが描かれ、1日約40台が生産されている説明が書かれている。

編集スタッフの取材後記

住友建機が国内で販売する建設機械は、ビビッドイエローと呼ばれる住友建機独自の伝統的な黄色で塗装されます。世界中どの工場でも同じ色を出せるよう基準となるマスターパネルがあり、それを基に塗料メーカーが調色します。色差(デルタE)を2以内、光沢(グロス)90%以上といった厳しい基準があり、塗料のタンクに1滴でも違う色が入ると不合格になるほどです。遠目から一目で「住友建機のショベル」と分かる美しさを実現すると同時に、どの1台も同じ色で塗装する住友建機の厳しい品質管理の象徴でもあるのです。

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