つぼいひろきの住友グループ探訪
住友館
大阪・関西万博

2025年4月13日から10月13日の184日間、大阪・夢洲で開催された大阪・関西万博。
住友グループの力を結集した住友館は、何度来館しても新しい驚きのあるパビリオンとして、連日多くの来館者が列をなすほどの人気を集めた。

この木の香りは… ボクには別子の森が見える!

「きのこの丘」では、落ち葉や枝や動物のからだなどの
役割を終えたいのちを土に還し、
土の中で植物を結びつけるきのこの役割を知ることができる。

住友の発展の礎である四国“別子の嶺”を
イメージした住友館の外観。
この木の香りは… ボクには別子の森が見える!

初めてやって来た2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)。東ゲートを入ると、すぐ目の前が住友館だ。壁面も屋根も全て木材で、まず屋根の美しい曲線に目が奪われた。住友の発展の礎である四国“別子の嶺” のシルエットを表現したものだという。住友館の外観を目の前にして、テンションが上がった。

「使用された木材は、住友の森で育ったヒノキとスギです。入口付近の壁面に使われているスギ材は、前の大阪万博が開催された1970年に植林したものです。そして、今回の万博で子どもたちが植林体験した苗木を、その跡地を含めた住友の森で育てる予定です。今、パビリオンに使われている木材も、一部は新たな植林地の看板などに活用します。『住友館は時を超えて、めぐる』を体現した住友館に触れ、過去から現在、そして未来へのつながりを感じていただければうれしいです」と住友館館長の西條浩史さんは語る。さっそく住友館担当の倉内智さんに館内を案内してもらうことになった。

館内では、はじめにランタンを渡され、これから入る森のことや探検の仕方を教わった。いよいよ「UNKNOWN FOREST」へ。「水の洞窟」「巣穴の記憶」「虫たちの小径」などと名付けられた各エリアに、色々な生きものが潜んでいる。光る木の切り株にランタンを置くと、生きものたちの様子が映像で映し出された。オオカミに追われて餌食になったシカが描かれるが、そのオオカミにも育てている子どもたちがいる。まさに森に息づく「いのち」を体感できる。

ランタンの不思議な機能を示すイラスト。震える、ランタンが話しかけてくる、置くと周囲が光り『FANTASTIC!』 ランタンの不思議な機能を示すイラスト。震える、ランタンが話しかけてくる、置くと周囲が光り『FANTASTIC!』
来館者がランタンを所定の場所に置くと、生きものたちの姿が見えたり、輝き出したりと、
インタラクティブな演出がさらに冒険気分を盛り上げる。

順路はないので、来館者はそれぞれランタン片手に自由に探検する。暗闇の中に光る目に思わず後ずさりしたり、森の中を吹く風や差し込む光、そして霧を感じたりする。「大人も、まるで子どもに戻ったかのように冒険を楽しめます」と西條さんが話していたように、来館者である森の中の冒険者の顔はみんなわくわくして輝いている。うっかりすると見落としそうな小径の奥に、葉っぱ切り絵アーティスト・リトさんとのコラボレーションエリア「木漏れ日の園」があった。白い葉っぱだけで構成された明るく幻想的な空間で、葉っぱの中に隠されたリトさんの作品を探すことを楽しめる。開幕当初はこのエリアを来館者の2割ほどの人しか見つけられず、SNSで隠し部屋だと話題になったそうだ。倉内さんは「私たちは隠しているつもりはなかったのですが、話題になったおかげで、多くの人に見つけていただけるようになりました」と話す。

ランタンを手に「UNKNOWN FOREST」へ足を踏み入れると、
様々な「いのちの物語」が広がる。
「木漏れ日の園」で上を見上げると、リトさんの作品が木漏れ日の中に現れる。

森では、倉内さんが「ほら、そこに」と教えてくれなかったら、木の幹にとまっている昆虫に気付けなかった。ここにはどれだけの生きものがいるのだろう。大阪・関西万博の開催期間中も、動物がガサガサと動く仕掛けが追加されるなど、館内の随所に工夫が凝らされている。

ボクは緑だ ボクは緑だ

一人ひとりが集めた「いのちの物語」を、いにしえより森を見守ってきたマザーツリーに託すというすてきな演出でランタンを返すと、続いて幅20m、高さ7.5mの「パフォーミングシアター」だ。大型LEDビジョンとメッシュスクリーンの間に、パフォーマーが踊る舞台が設けられている。そこで、小さな種から始まったマザーツリーの「いのちの物語」が、幻想的な映像と音楽、そして風を表現するパフォーマーの躍動的なダンスで展開された。観客は全員、階段状になっている座席でゆったりと没入できる。「二重のスクリーンに映し出される映像がより立体的に見えるので、実は端の席もおすすめです」と倉内さんが教えてくれた。

幻想的な映像とパフォーマーの躍動が融合

「森、風、水、光、虫、動物――すさまじいエネルギーで万物は生まれ、朽ちて、またいのちがめぐっていくのかー!!」
「いや~壮大でしたね! 風を表現したダンサーさんの映像も、CGと融合してすごくよかったです!」 「実はあれ、毎回ダンサーが生で踊っているんですよ」
「もしかしていのちのめぐりの1つだったってこと一!? 終わっても、まだ心で続いてる気がするな……!」

最後の展示「ミライのタネ」は、住友グループ各社が持つ先端技術をもとに、豊かな未来社会のために生成AIや各社の社員が考えたアイデア約700件のうち500件が、期間中入れ替えされながら並ぶ。この展示空間は予約なしでも来館できるようになっていた。

全65分間の体験時間はあっという間だった。なかなか予約が取れない人気のパビリオンだというのもうなずける。「何かの機会にふと、住友館での体験を思い出して、自然やいのちの営みに思いを寄せるきっかけになればよいと思います」と西條さん。ボクは、今日の感動をずっと忘れないと心に誓った。

編集スタッフの取材後記

「ミライのタネ」で、住友グループ34社の最先端技術や取り組みが紹介されたほか、ショップでは住友化学が開発した温度調節樹脂「コンフォーマ®」を用いたTシャツや、住友金属鉱山の太陽光をコントロールする素材「SOLAMENT®」の日傘が早々と売り切れるほどに注目されたそうです。募集人数を超えて集まったボランティア活動では、住友グループ内交流も活発に行われたようです。

マンガルポ「住友グループ探訪」 ナンバー

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