住友と共創 ~ビジョンを描く~

三井住友カード

「三井住友カードの森」で顧客との絆育む

クレジットカード事業を手掛ける三井住友カードは、キャッシュレス社会の実現を推進するだけでなく、持続可能な社会の実現にも貢献することを目指している。その取り組みの象徴が「三井住友カードの森」だ。2020年からスタートしたこのプロジェクトは、森林を再生するだけでなく、顧客、地域社会、そして地球環境全体にとって価値を生み出す取り組みである。

「三井住友カードの森」に掲げられている看板

顧客の利便性高め環境負荷も軽減

「三井住友カードの森」は、WEB明細の利用拡大により減少した紙の利用代金明細書の発行費用を、森林保全活動に充てる取り組みから始まった。従来の紙媒体からWEBやアプリでの明細確認へと移行することで、顧客の利便性を高めると同時に、紙の消費を抑え、環境負荷を低減する。さらに、その結果として得られた収益を森林保全に投資することで、持続可能な循環を生み出している。

具体的には、「わたしたちの3つの取り組み」として以下のように整理している。

(1)紙の使用量を減らし、原料となる木を守る
紙の明細書1通をWEB明細にすることで、ペットボトル500本分の体積と同等のCO2(500g)を削減できる(日本クレジット協会HPより)。その結果、乱伐を防ぎ、CO2吸収源である木々を守ることに貢献できる。

(2)森林や環境に良い製品を使用する
三井住友カードでは、環境に配慮した紙製品への切り替えを進めている。紙の利用代金明細書はFSC認証を受けた封筒で送っている。

  • (注)FSC認証とは、Forest Stewardship Council(FSC:森林管理協議会)が定めた規格をもとに、持続可能な森林の利用と保全を目的に、適切に管理された森林の木材やその他、リスクの低い管理された原材料から作られた製品を認証する制度。

(3)森林を健全な状態に整備する
適切な植林や間伐を行うことで、様々な種類の木々が共生する「多様な森」を増やし、より多くのCO2吸収や保水性の向上を目指す。森林は、CO2の吸収源として地球温暖化の防止に重要な役割を果たすだけでなく、土壌の保水力を高め、災害を防止する機能も有している。多様な生態系を育むことで、生物多様性の保全にも貢献する。

現在、「三井住友カードの森」は、岩手県住田町、奈良県天川村など、全国5カ所で展開されている。各地域の特性を考慮し、その土地に適した樹種を選定することで、より持続可能で豊かな森を育てている。

全国5拠点で展開されている「三井住友カードの森」

例えば、奈良県天川村では、古くから地域に生育していた「キハダ」という樹木の植林を通じて、伝統的な地域資源の再生にも取り組んでいる。キハダは、漢方薬の原料となる樹皮を持つ有用な樹木であるが、近年では減少が懸念されている。「三井住友カードの森」の取り組みは、失われつつある地域資源を再生し、地域の文化や歴史を継承する役割も担っている。

マーケティング部門が主導し顧客と二人三脚で

「三井住友カードの森」の最大の特徴は、マーケティング部門が主体となって運営している点である。通常、企業の社会貢献活動は広報部門やCSR部門が担当することが多いが、三井住友カードでは、顧客とのコミュニケーションを重視するマーケティング部門が中心となることで、より顧客の視点に立った取り組みを実現している。

クレジットカードの利便性向上と社会貢献を結びつけることで、顧客の共感と支持を得ながら、共に持続可能な社会づくりを進めている。顧客にとって、クレジットカードの利用が社会貢献につながるという体験は、企業への信頼感や愛着を高めるだけでなく、自身の消費行動を見つめ直すきっかけにもなる。

実際、この取り組みを通じて、顧客の企業への好感度やカード利用意向が高まるという効果も生まれている。顧客とのエンゲージメントを高めることは、企業の持続的な成長にも不可欠である。「三井住友カードの森」は、社会貢献を通じて顧客との絆を深める先進的な取り組みといえるだろう。

植樹の様子

森林保全団体と協働し地域社会と連携

森林づくりは、地域社会との連携が不可欠である。「三井住友カードの森」では、植林や間伐などの活動に、地元住民や行政関係者、NPO法人などが一体となって取り組んでいる。地域の方々との交流を通じて、森の大切さを共有し、地域活性化にも貢献している。

森林は、地域住民にとって、木材や食料などの資源を提供するだけでなく、文化や精神的な価値を育む場でもある。「三井住友カードの森」は、地域住民の参加を促し、共に森づくりを行うことで、地域への愛着や誇りを醸成し、持続可能な地域社会の実現に貢献している。

この「三井住友カードの森」の運営において重要な役割を果たしているのが、一般社団法人more treesである。more treesは、音楽家の故・坂本龍一氏が創立し、建築家・隈研吾氏が代表を務める森林保全団体だ。国内外で森林保全活動を展開する専門家集団で、各地域の特性を調査し、最適な植林計画を立案するだけでなく、地元住民との調整や、植林・間伐の指導なども行ってきた。三井住友カードは、彼らの専門知識と人的なネットワークを活用して協働することにより、森林保全に関する専門性を高め、持続可能な森林づくりを実現している。森の保全活動によって、東京・ニューヨーク間のフライト
約4500往復分のCO2削減効果を目指している(more trees調べ)。

間伐の様子

三井住友カードは、「三井住友カードの森」の活動を、今後他の地域にも拡大していく計画だ。森林の再生・保全活動を通じて地域と地球環境全体の価値を高めていく“関係人口”を増やしていこうとしている。さらに、森林づくりだけでなく、地域社会との連携を深め、新たな価値を創造していくことも視野に入れている。例えば、森林を活用した地域活性化プログラムの開発や環境教育プログラムの実施など、多角的な取り組みを通じて持続可能な社会の実現に貢献していく考えである。

 ジャーナリスト堀純一郎が住友のDNAを探る
「三井住友カードの森」の取り組みは、住友の事業精神と深く結びついている。住友グループは創業以来、銅山の経営において、森林の保護・育成にも力を入れてきた。銅の採掘には大量の木材が必要だったが、伐採した跡地に植林を行うなど、持続可能な経営を実践してきたという。サステナビリティの精神は創業時から宿っているといえよう。
しかも、SMBCグループが掲げる5つの価値観「Five Values」(注:三井住友カードの経営理念でもある)の中核には、「カスタマーファースト」という考え方がある。これは、顧客の視点に立ち、顧客と共に社会に貢献していくという「三井住友カードの森」の理念と共通する。マーケティング部門が中心となってカード保有者(顧客)と共に取り組んでいる「三井住友カードの森」は、カスタマーファーストの取り組みそのものである。
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