施設は1階と2階に分かれており、子どもたちが自由に学び、遊べる、多様な空間が用意されている。
住友と共創 ~ビジョンを描く~
三井住友銀行
子どもたちが、「行きたい」「居たい」「やってみたい」と思う魅力を満載した新たな拠点「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」が東京都板橋区に誕生した。三井住友銀行が出張所跡地に開設した施設で、様々な体験を通して“好奇心”をかき立て、子どもたちの未来を育む拠点である。2025年3月26日にオープンセレモニーが行われ、4月1日から本格的に運営を開始した。来館には利用登録が必要で、対象は近隣の小学校に通う小学4年生から6年生。一部の有料プログラムを除いて、利用は原則として無料だ。
施設名「アトリエ・バンライ」にある「バンライ」には2つの意味がある。1つが、あらゆる子どもたちに開かれた場所である「千客万来(センキャクバンライ)」という意味。もう1つが、子どもたちに体験という資産を貯める人生の銀行「Bank of Life(バンク・オブ・ライフ)」(略してバンライ)という意味である。「創造力や好奇心が交差し、新しい自分が育まれる場所であってほしい」という願いが込められている。旧三井住友銀行板橋中台出張所の跡地を活用して開設された施設だが、金融機関のロゴや看板を掲げていない。子どもたちに居場所と体験を提供し、未来の可能性を広げたいと、同行が立ち上げたもので、社会課題の解決という純粋な動機に基づいているからだ。同行が運営し、施設には2名の常駐スタッフに加え、イベントの対応等で社員も勤務するなど、直接運営に携わることで、理念の徹底を図っている。
施設は1階と2階に分かれており、子どもたちが自由に学び、遊べる、多様な空間が用意されている。
1階には、体験プログラムやイベントが開催される「アトリエ」、自習や作業ができる「スタディーステーション」などがある。さらに、学習書や漫画、小説など約4000冊の図書を壁一面に揃えた「バンライ・ライブラリー」は圧巻だ。子どもたちが自由に本に触れ、新たな発見を生み出すとともに知識を深める場となっている。2階には、食育イベントやこども食堂が開催される「バンライ・カフェ」などがある。
毎週2回程度開催している体験プログラムのテーマは、お金、食、アート、プログラミング、サイエンスなど多岐にわたる。これらのプログラムには、SMBCグループの他20社強の企業や団体が参画しており、様々な業界の企業が専門性を生かしたユニークな体験プログラムを提供している。 企業との連携は、「共感に基づく協働」である。企業側にとっては、アトリエ・バンライのような常設の拠点で、単発では難しい複数回にわたる長期的なプログラムを実施したり、地域のこどもたちと交流できることも大きなメリットとなっている。まさに、三井住友銀行と協力企業の“共創”によって成り立っており、双方にとってWin-Winの関係を築いている。子どもたちは様々なプログラムに参加する他、宿題をしたり、ボードゲームをしたり、あるいは一人で読書に没頭したりと、思い思いの過ごし方で施設を利用しており、すでに「子どもの居場所」として地域に定着し始めている。
アトリエ・バンライの構想が持ち上がったのは、2024年6月だった。「教育機会の提供」にすでに取り組む同社が、「子どもたちが自分たちのなりたい姿、将来を考えそのための進学や就職を望む際に、受験期になって初めて意欲が芽生えるのではなく、低年齢期からの多様な体験が、その後の好奇心や忍耐力、などの“非認知能力”の育成につながり、結果としてよりよい将来の選択の支援につながっていくはずだ」という思いで開設へ向けて動き出した。
子どもたちには定期的にアンケートを実施し、施設を初めて訪れた際やプログラム利用後や一定期間利用後の変容を測定しようとしている。施設開設の意義やゴールの達成度、子どもたちの成長にどれほどインパクトを及ぼしたか等を客観的に評価し、今後の運営や展開に活かすためである。
今後の展望として、新しい企業とのプログラムの連携や夏休み期間中の目玉イベントの開催も計画している。プログラムの内容は改善や入れ替えを行い、子どもたちに常に新鮮な学びの機会を提供し続ける方針だ。三井住友銀行がこの取り組みを通じて実現したい未来は、「子どもたちそれぞれが望む将来や未来を実現し、チャレンジできる社会を作ること」である。この施設が、子どもたち一人ひとりの「幸せな成長」につながり、彼らが思い描く未来を自らの力で実現できる社会を築く礎となることを目指している。ひいては、2023年からの中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」で掲げたテーマの1つである“貧困格差の解消”にもつなげていく。同行は、同様の取り組みが地域や他の企業に広がっていくことを期待している。