2025年度「文化財維持・修復事業助成」「海外の文化財維持・修復事業助成」「修復文化財展示事業助成」「アジア諸国における日本関連研究助成」の助成を決定

1.2025年度 「文化財維持・修復事業助成(国内・海外)」

住友財団では、文化財を保存し次の世代に継承していくことは今の世代の責務であるとの認識のもと、設立以来30年以上に亘り国内外の文化財維持・修復事業助成を続けてまいりました。
今年度は、2025年10月~11月に助成対象を公募し、多数の応募(国内119件、海外31件)の中から、次のとおり助成先を決定いたしました。

1.国内

助成対象 47件、助成金総額 7,314万円
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):1,097件・20億9千万円余>

一例:

北杜市(山梨県北杜市)
北杜市内出土縄文土器保存修理事業(縄文時代)
助成金額180万円

縄文時代の遺跡が多い山梨県の中でも北杜市はその最も多い地域である。今回市内の縄文時代中期の遺跡から出土した、顔面把手付土器、口縁肥厚帯土器および水煙文土器が対象となる。いずれも複雑な立体造形が特徴的な貴重な縄文土器であるが、接合面の接着剤等の劣化により不安定な状況が見られるほか、破片のままになっているものもあり、全面的な保存修理を行う。

一例:

満願寺(愛媛県今治市)
木造阿弥陀三尊立像保存修理事業(鎌倉時代)
助成金額176万円[今治市指定有形文化財]

愛媛県今治市の満願寺に伝わる阿弥陀三尊立像である。阿弥陀如来像は、快慶の創始した安阿弥様の流れに即しながらも、時代の下降する要素も認められ、鎌倉時代中期の作と考えられている。両脇侍の制作年代もさほど違いないと考えられ、同時代における中央の作例と比較しても遜色ない優れた作例といえる。経年による劣化により全面的な修理が必要な状況にあり、2ヵ年計画で修復を図る。

2.海外

助成対象 14件、助成金総額 3,630万円余
<財団設立以来の助成件数・金額(単純累計):421件・10億円余>

一例:

ロサンゼルス郡美術館(アメリカ合衆国)
河鍋暁斎筆「達磨図」の修復
助成金額 23,000ドル

対象は、明治21年(1888)、浮世絵と狩野派の伝統的な手法を併せ持つ河鍋暁斎筆「達磨図」で河鍋暁斎の作品群においても幅184cmと畳一枚分を超える大振りの掛軸として際立った作品である。2024年にプライスコレクションからロサンゼルス郡美術館に遺贈されたもの。現状、図画の表面にはっきりした折れが出来ており、軸周辺の布は破れ、汚れ等、構造上の問題もあり、日本へ移送し2ヵ年の修復作業を行う予定である。

一例:

ベトナム国立歴史博物館
古代木造小舟の修復
助成金額 10,700ドル

対象は、ハノイ紅河で発見され2010年からベトナム国立博物館に収納された紀元前1世紀頃の古代木造小舟(木棺)である。一本の大木の幹をくり抜いて作られた古代木造小舟は、考古学者によれば棺とみられており、ハイフォン近くで発見された有名なViet Khe木棺(100点超の銅製の宝物と一緒に埋葬された)と同様に、当時の権力者を宝物と一緒に埋葬した木棺と考えられている。博物館では水槽に浸して保存してきたが、木が腐食、劣化してきた為、小舟の木材繊維にトレハロースを吸収させ、本来の木の硬度を3年計画で復活させる予定である。

2.2025年度 「修復文化財展示事業助成」

助成対象 1件、助成金総額 150万円

文化財維持・修復事業助成(国内・海外)を受けて修復された文化財を公開展示する事業への助成を昨年新設したものです。2年目となる今年度は、2025年10月~11月に助成対象を公募し、応募のあった1件を、別紙の通り助成先として決定いたしました。

一例:

なら歴史芸術文化村(奈良県天理市)
特集展示「修理完成記念 大和のみほとけ」開催事業
助成金額 150万円

なら歴史芸術文化村は、文化財の修復工房を通年で公開している施設として知られるが、そこで修復された文化財の公開展示も行っている。本事業では、住友財団の助成を受けて同所の工房で修理が行われ、この3月に完了する木造四天王立像(光堂寺所蔵)を含めた、奈良県にゆかりの仏教美術の名品を集めた修理完成記念の特集展示が行われる。修理内容の振り返りとともに、文化財修理の意義について考える機会となることが期待される。

3.2025年度 「アジア諸国における日本関連研究助成」

助成対象 65件、助成金総額 5,029万円余
<財団設立以来の累計助成件数・金額(単純累計):2,012件・15億円余>

アジア諸国と日本との相互理解を深めるため、主に東アジア、東南アジアの研究者による「日本関連研究」に助成を行ってまいりました。今年度は、2025年9月~10月に助成対象を公募し、応募のあった1,256件の中から、別紙の通り助成先を決定いたしました。

一例:

研究テーマ『中国における日本の尺八を通じた音楽アイデンティの構築』
中国 リーズ大学(英国) 言語・文化・社会学部 日本・東アジア研究講師
NG Kwok Wai (他2名)
助成金額 100万円
中国では宋代以降2000年頃まで姿を消していた尺八だが、日本の同音楽紹介をきっかけに同愛好者が急増。本研究は、彼らの音楽アイデンティについて考察し、現代中国における尺八文化の受容とその意義を検討するもの。

一例:

研究テーマ『CSRを通じたインクルージョン:マレーシア企業が日本の「障害者雇用」から学ぶこと』
マレーシア マラ工科大学 アルシャッド・アユブ大学院ビジネススクール 上級講師
ズリナ・イスマイル (他3名) (Zurina Ismail)
助成金額 5,000ドル
日本は障害者雇用促進法に基づく包括的な雇用制度により、障害者雇用の分野で世界的なモデルとされている。一方、マレーシアでは依然として課題が多く、障害者雇用率は低水準に留まっている。本研究は、日本とマレーシアの企業を対象に、企業の社会的責任(CSR)の価値観が障害者雇用の実践にどのように影響するかを分析する。

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