住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

SMBC日興証券×貧困、次世代の育成

マテリアリティに掲げる社会課題解決の促進に向け、
NPOの活動をプロボノワークでサポート

 貧困
世界人口の10人に1人が1日1.9ドル以下という極度の貧困状態で生活しているといわれる。この貧困の解決は世界的なテーマであり、SDGs(持続可能な開発目標)でも、達成すべきゴールの第1番に「貧困をなくそう」が掲げられている。衣食住といった必要最低限の生活水準が満たされていない、主に発展途上国に多く見られる貧困問題を「絶対的貧困」というが、実は貧困は海外・途上国のみの問題ではない。日本をはじめとする先進国で見られる貧困は「相対的貧困」といわれ、日本ではシングルマザーの家庭を含めて生活困窮状態にある人は多い。厚生労働省の2018年の調査では、国民の等価可処分所得中央値の半分に満たない相対的貧困状況にある人は7人に1人とされる。SMBC日興証券は、社員が業務上培った専門知識やスキルを無償提供する社会貢献活動「プロボノワーク」を導入し、貧困・生活困窮者に少額融資を行い自立を支援するNPO(非営利団体)の活動を支援することで、貧困問題の解決に努めている。
 次世代の育成
日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっている。社会・産業界全体で取り組むべき課題であることはもちろん、企業にとっては将来の自社を支える人材を数・質の両面から育てていかなければならないうえ、長年にわたり蓄積してきた技術やノウハウの継承も無視できない要素となる。加えてコミュニティの観点からも、これからの地域社会で柱となって活動する人材の創出は先送りできない重要なテーマだ。SMBC日興証券は、児童養護施設などで育った若者の就労を支援するNPOに対して、企業見学や職場体験、社員採用などの面でサポートしてくれる企業の発掘などの支援を提供している。

日頃の業務で培った知識やスキルを無償で提供し、社会課題の解決に役立てる「プロボノ」を実施する企業が増えているが、現時点で国内金融機関における事例はあまり多くない。SMBC日興証券はSMBCグループの一員として以前からプロボノに取り組み、その社会的意義はもちろん、企業価値向上につながるプラスのインパクトがあることも実感していた。ただ、グループでの取り組みでは業務外の時間を活動に充てるとしていたため、繁忙期などが各社の参加者によって異なり、共同で活動する時間が限られてしまう傾向があった。

そこでSMBC日興証券は、一歩踏み込んだプロボノを模索した。社会課題の解決に取り組むNPO(非営利団体)などの組織の多くは、専門的な知識やアイデアは豊富に有しているものの、組織の運営をはじめ専門領域以外の知識・スキルを備えた人材が不足しがちだ。証券会社としては財務や金融などの知見はもちろん、企画力やプロジェクトマネジメント力も提供できるため、自社のリソースでNPOの活動に貢献することが可能である。

プロボノとボランティアの違い(イメージ)
ボランティアが自分の知識やスキルに関係なく社会貢献に取り組むのに対し、プロボノは自らが業務を通じて培ってきた専門性を生かして社会に貢献する活動を指す。
出所:認定NPO法人 サービスグラント

同社はプロボノと業務を結びつけ、社員が平日の業務時間中、証券会社ならではの知識・スキルなどのリソース提供と、社会人として培った経験に基づく支援を行える「プロボノワーク」制度を2020年3月から導入した。プロボノに充てられる時間は業務時間の最大20%(週7.5時間)としている。なお、同社のプロボノは、社員が「業務時間を活動に充てることができる」という点において、他社の同様の取り組みとは仕組みが異なる。

この制度を立ち上げた目的は主に3つある。1つは、経営戦略に掲げている「経営理念の実践を通じた社会課題の解決」およびSDGs(持続可能な開発目標)に絡めた「環境」「コミュニティ」「次世代」という同社のマテリアリティ(重点課題)が、社会課題の解決に取り組むNPOを支援することと合致した点だ。社員の積極参画を促すことで、地域コミュニティとの共生と貢献、そしてより大きな目標である持続可能な社会の実現に向けた、一歩踏み込んだ具体策だという。

2つ目の目的は社員の育成だ。周囲の環境が急速に変化し、先行きが不透明な時代に対応するには、新たな経験によって社員の能力向上とアイデア創出を促進することが必須だ。通常業務では関わりを持つことがない他部門の社員やNPOの代表・関係者など多様な人と協働し、今まで経験したことのないNPOの現場で様々な課題解決に取り組むことで、リーダーシップの実践を含め様々な経験ができる。また、業務時間も活用できるため、チームメンバーがより密度の高い時間を共有することになり、成果物の量や質も向上し、結果、参加者のエンゲージメント向上にもつながる。

そして3つ目は、企業価値の向上だ。社会課題の解決と社員育成を特色ある活動により推進することで、企業価値の源泉となる人的資本やブランドなどの知的資本が高まっていく。これら3点に経営陣も着目し、その価値を認めたことで制度の早期実現につながった。

同制度では、6カ月単位の年2期に分け、1つのNPOに対し6〜8人の社員がチームを組み、支援を行う。現在進行中の第3期(2021年7〜12月)時点までに参加社員は延べ94人、支援先NPOは計6団体となっている。参加社員は社内公募で選出し、業務時間外での参加を希望するサポーター社員も加えてチームを構成。支援先NPOは、その団体が解決に向けて取り組んでいる社会課題と具体的な活動に着目して選定する。

「一般社団法人 グラミン日本」では、シングルマザーを対象とした「プチ起業ワークショップ」の運営を支援している。

シングルマザーなど生活困窮者に対して低利・無担保の少額融資を行い、貧困からの脱却と自立を支援する「一般社団法人 グラミン日本」には、第1期から第3期まで継続して支援を行っている。支援対象業務はマイクロファイナンス(小規模融資)事業の推進、会員企業の他社プロボノチームとの協働推進、コーポレート機能強化などだ。

2期通して参加しているある社員は、マイクロファイナンスの提供と起業に向けたワークショップの開催により、非正規雇用の女性を主な対象として自立をサポートしている。参加のそもそものきっかけは何かしら社会貢献に携わりたいとの思いだったが、自身がシングルマザーであったことや、かつて海外で極度の貧困状況を目撃した経験から、グラミン日本でのプロボノを希望したとのことだ。

制度では業務時間の20%までをプロボノに充てられるが、実際には業務時間に加えてプライベートの時間を使うことも多いという。第2期でチームリーダーとして参加した時には、団体の全容把握や団体側との連携に費やす時間が増えた。しかし、苦労した以上に、それよりも多くの気づきを得ただけでなく、自らの考えをまとめて実現していくスキルを育てられ、本来の業務に対する自信が増したとのことだ。

児童養護施設などで育った若者の就労をサポートする「NPO法人 フェアスタートサポート」への支援も、第1期から続けて実施している。同社のマテリアリティの「次世代」はもちろん「コミュニティ」にも合致する活動であり、地域のロータリークラブとの連携推進による就労先企業の発掘や企業紹介動画の作成など様々な成果をすでに生み出している。

活動中にはオンラインで支援内容の報告会を実施している。

制度開始から1年半が経過した時点で、同社ではプロボノワークの社内定着が進んでいる実感を得ている。今後も参加社員と支援団体を拡大し、多様な社会課題解決への貢献を広げていく考えだ。

SMBC日興証券
https://www.smbcnikko.co.jp/
当社は、1918年に川島屋商店として創業以来、100年以上にわたり、多くのお客さまに支えられ、お客さまと共に歩んでまいりました。
資本市場を通じて、持続的成長を志向する企業とその成長を期待する投資家の方々をつなぐことで、効率的で生産的な資金循環を生み出し、健全な資本市場の発展を、豊かな人生・社会の実現につなげていくことが、総合証券会社としての当社の社会的使命です。
お客さまと共に発展し、最高の信頼を得られる会社を目指し、「いっしょに、明日のこと。」をブランドスローガンとして、革新性の高い金融サービスで、お客さまにとっての最善の利益の追求に取り組んでまいります。

各社が取り組む社会課題

脱炭素 パネルイメージ

脱炭素

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介します。

サプライチェーン パネルイメージ

サプライチェーン

サプライチェーンのグローバル化や複雑化に伴い、企業にはサプライチェーン上で発生する課題への適切な対応が求められています。

新しい働き方 パネルイメージ

新しい働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が従来型の働き方を見直したことで、働き方改革が加速しています。

健康 パネルイメージ

健康

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって従業員の健康への配慮はよりいっそう重要なテーマとなっています。

気候変動 パネルイメージ

気候変動

地球温暖化の進行はビジネス上の深刻なリスクを引き起こす可能性があります。そのため、企業には中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められています。

モビリティの電動化 パネルイメージ

モビリティの電動化

環境負荷軽減への対応や社会的ニーズの高まりとともに、モビリティの原動力がガソリンから電気へと置き換わりつつあります。

コミュニティ パネルイメージ

コミュニティ

人と人のつながりであるコミュニティを再生・再構築することで社会課題解決に向き合う動きが活発になっています。

貧困 パネルイメージ

貧困

子どもの貧困問題への対応が喫緊の課題になるなど、現代の日本においても貧困は深刻な社会課題の一つとなっています。

次世代の育成 パネルイメージ

次世代の育成

日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっています。

先端医療 パネルイメージ

先端医療

近年における医療の飛躍的な進歩には、大学等の研究機関はもとより、企業による最先端技術への取り組みが大きく寄与しています。

地産地消 パネルイメージ

地産地消

再生可能エネルギーを生かし、地産地消を通じて脱炭素に貢献しながら産業振興も目指す取り組みが各地でスタートしています。

食品ロス パネルイメージ

食品ロス

世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンが毎年廃棄されているとされ、食品ロスの解決は一刻を争う課題になっています。

地球環境との共生 パネルイメージ

地球環境との共生

人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべきさまざまな課題について、各社の取り組みを紹介します。

強靭性・回復力 パネルイメージ

強靭性・回復力

自然災害だけでなく、さまざまなハザードがあり、その姿は時代とともに変化し、激甚化もしています。それに負けない強靭性や回復力を持つしなやかさが求められています。

地方創生 パネルイメージ

地方創生

地域の資源を生かして産業を強化することで、地方の人口減少を克服し、持続的な社会を創生する取り組みを紹介します。

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