住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

住友電工×地球環境との共生

レアメタルのリサイクルシステム構築で
持続可能な資源の実現を目指す

 地球環境との共生
人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべき課題は多岐にわたる。例えば温室効果ガス(GHG)削減で脱炭素社会につなげる気候変動対策、また人々の生活や事業活動は自然の恵みを利用して可能になっているという観点からの自然資本・生物多様性保全、そして海洋プラスチック問題に象徴される環境負荷低減など、まさに多種多様だ。さらには、近年激甚化が顕著な自然災害にいかに対応し、安心・安全な暮らしを実現していくかという視点も注目される。住友電工は、希少金属(レアメタル)である「タングステン」のリサイクル技術の開発や、リサイクルプラントの稼働などを通じて、地球規模で枯渇していくレアメタルを持続可能な形で利用し続けるリサイクルシステムを構築している。

住友電工は、自動車、情報通信、エレクトロニクス、環境エネルギー、産業素材の5つの事業分野を世界約40カ国で展開している。その中で、生活者の目には触れないが、製造業で重要な役割を担う超硬合金を使った工具の製造を行っている。高硬度、高耐摩耗性、超高耐熱性を備えた合金で、切削工具の刃先(インサートチップ)やドリルなどに用いることで高速加工に役立っている。自動車から産業素材まで、すべての産業での製造加工になくてはならないツールが、超硬合金を使った工具だ。

その超硬合金の製造に欠かせない原料が、「タングステン」である。タングステンは希少金属(レアメタル)の一種で、生産の80%を占める高い割合で、中国などの海外に原料を依存している。その上、タングステンは近い将来、枯渇する可能性が高い資源だ。住友電工では超硬合金を安定供給するために、輸入依存の現在の状況からリサイクルによって資源を確保する方向に舵を切った。

写真:タングステン
スウェーデン語で「重い石」を意味するタングステン。元素記号は「W」。

ここで、超硬合金を製造するためのタングステンの製造プロセスを確認しておきたい。まずタングステン鉱石から精鉱などのプロセスを経て、三酸化タングステン(WO3)に精錬する。還元、炭化工程を経て、炭化タングステン(WC)を製造し、これにコバルトやタンタルといった金属を混ぜて超硬合金の素材になる完成粉末を作る。ここで出てきたタングステン化合物のうち、WCは住友電工や他社などの超硬合金のスペックに合わせて製造されている。一方で、WO3は汎用的な中間原料であり、原料として流通しているものは主にWO3となる。WO3をリサイクルによって生産することができれば、タングステン鉱石からの精錬フローを行うことなく超硬合金の製造への道筋ができる。

タングステン鉱石精錬、スクラップのリサイクルから超硬合金工具製造までのサイクル
タングステン鉱石精錬、スクラップのリサイクルから超硬合金工具製造までのサイクル
写真:製造された三酸化タングステン粉(左)、炭化タングステン粉(右)
製造された三酸化タングステン(WO3)粉(左)、製造された炭化タングステン(WC)粉(右)

住友電工では、タングステンの安定供給のために、1990年代から超硬切削工具のスクラップを原料としてリサイクルを行ってきたが、2000年代後半には、新たなリサイクル技術開発に乗り出していた。そして、2011年に原料として流通しているものと同等の純度を持つWO3の再生をスクラップ原料から可能にする新化学処理法を開発した。その後、国内で子会社の富山製作所にリサイクル拠点を設置。顧客から回収した超硬合金工具のスクラップから、WO3を再生する仕組みを整えた。

写真:国内のリサイクル拠点、富山製作所(左)、住友電工のリサイクル専用回収ボックスと回収された使用済みの超硬切削工具(右)
国内のリサイクル拠点、富山製作所(左)、住友電工のリサイクル専用回収ボックスと回収された使用済みの超硬切削工具(右)

顧客から廃棄物になる工具のスクラップを有料で買い取り、リサイクルして再び超硬合金の工具に仕立てる。顧客にとっても使用済みの工具が有価物になるメリットがあり、住友電工はタングステンの原料が手に入る。タングステン鉱石に含まれるタングステンの割合は1%未満といわれ、超硬合金工具のスクラップは圧倒的にタングステンの含有量が多く、環境負荷をかけずにWO3を得られるのも大きなメリットだ。

こうして、資源を無駄にしないリサイクルの循環が出来上がった。現在、住友電工が国内向けに出荷している超硬合金工具の製造に必要な原料と同等量相当を、国内のタングステンリサイクルで再生している。

タングステンリサイクルの事例の一つにトヨタ自動車と連携した国内リサイクルシステムがある。原料リスクの軽減だけでなく、スクラップの回収による経済的メリットや社会課題の解決を目指して、再生を考慮したスクラップの分別に対応したリサイクルシステムを構築し、タングステンの100%回収・リサイクルを実現している。

一方で、国内のリサイクル拠点だけでは多様なリスクには対応しきれないという課題がある。そこで住友電工は米国のタングステン粉末メーカーとの間に合弁会社のNiagara Refining(NIRE)社を設立し、2011年に米国のニューヨーク州バッファロー郊外に工場を建設して、グローバルなタングステン鉱石の精錬とリサイクルの拠点を置いた。2023年には、リサイクルの量産設備を新たに導入することを予定している。これにより、国内だけでなくグローバルでもタングステンのリサイクルで生産量が確保できる。リサイクル原料から超硬合金工具という完成品までを一貫して生産できるグローバルリサイクルシステムが完成し、地球環境との共生に寄与していく。

住友電気工業株式会社
https://sumitomoelectric.com/jp/
住友電工は1897年の創業以来、社会インフラを支える電線・ケーブル事業を軸に、オリジナリティのある新しい製品・技術を生み出し、幅広く社会の発展に貢献してきました。現在、「環境エネルギー」「情報通信」「自動車」「エレクトロニクス」「産業素材」の5つの分野で、グローバルに事業を展開しています。お客様や社会のニーズに応えた製品・サービスの提供を通じ、国際社会から信頼される「Glorious Excellent Company」を目指します。

各社が取り組む社会課題

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地球環境との共生

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地方創生

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