住友が取り組む社会課題 ~未来への羅針盤~

住友理工×脱炭素、モビリティの電動化

コアコンピタンスである高分子材料技術を生かし、
自動車の電動化推進とカーボンニュートラルをサポート

 脱炭素
地球温暖化の原因となる温室効果ガス(GHG)、とりわけ大きな影響をもたらす二酸化炭素(CO2)の排出を抑制し、GHGの実質的排出ゼロを目指すこと。カーボンニュートラルとも呼ばれる。日本政府は、パリ協定が掲げた世界の平均気温上昇抑制と今世紀後半のGHG排出実質ゼロという目標を達成するため、2030年までにGHG排出を2013年度比で26%削減する目標を設定。2020年10月には、2050年のカーボンニュートラルを目指すことを当時の菅義偉首相が宣言した。2021年4月の米国主催気候サミット(オンライン開催)においては、2030年までにGHG排出を2013年度比で46%削減する目標を表明した。住友理工は強みである高分子材料技術を生かした製品開発により、生活と産業に関わる多彩な分野の熱マネジメントをサポートし、CO2の排出削減に貢献している。
 モビリティの電動化
自動車は今、100年に1度の大変革期を迎えている。今後の自動車のあり方を示すキーワードとして「CASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動運転、Shared & Services=シェアリングとサービス、Electric=電動化)」が提唱され、それぞれの課題に自動車産業だけでなくさまざまな業界が取り組んでいる。電動化については、仕組み上CO2を排出せざるを得ない内燃機関のエンジンを有するこれまでの自動車を、電気で動くスタイルに置き換えていく動きが世界で大きな潮流となっている。住友理工は高性能断熱材を開発し、電動化の課題である「電気の効率的な消費」を支援するソリューションとして展開している。

持続可能な社会を実現するにあたり、大きな影響を与えるのがモビリティ、すなわち自動車をめぐる電動化の動きである。住友理工では、防振ゴム、ホースなど、従来の内燃機関(エンジン)を用いた自動車向け部品が事業のコアを形作ってきた。しかしながら、電動化の進展に伴い、こうした基幹製品の価値が下がる、あるいは使用部位によっては使われなくなる事態も想定され、ビジネスの継続において大きな課題となっている。

住友理工は、CASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動運転、Shared & Services=シェアリングとサービス、Electric=電動化)の時代を見据えて新たに基盤となる製品を開発するため、2016年に自動車新商品開発センターを設立。2020年には、事業部の垣根を越えて開発を進めるために、複数あった開発部門を統合し、新商品開発センターとした。

CASEの4要素の中でも、とりわけゴムなどの高分子材料技術に強いという同社のコアコンピタンス(企業の活動分野において、競合他社では真似できない核となる企業能力)を生かし、A(自動運転)とE(電動化)に焦点を当てた製品開発に乗り出した。このうち電動化の取り組みは、いうまでもなく脱炭素に向けた課題解決にも直接的につながる。そしてこの文脈で開発し、2020年に製品化したのが薄膜高断熱材「ファインシュライト」である。

薄膜高断熱材「ファインシュライト」(シートタイプ)。

現状の電気自動車(EV)が抱える最大の課題は走行距離の制約だ。実用性をより高めるため走行距離を延ばすには、自動車の駆動以外に消費される電力を抑える必要がある。その視点で自動車を見たとき、EVには熱源となる内燃機関がないため、冬場の車内暖房に多くの電気を費やしてしまい、その分、走行距離にも影響を与えてしまう。

高分子材料による熱マネジメントを得意とする同社では、以前から放熱に関する開発を進めており、すでに車両用のモーターに使われる放熱材は製品化していた。しかし上記の課題に対しては熱を逃さずに有効利用する必要があったため、2016年に従来とは正反対の断熱というアプローチで研究開発をスタートさせた。

その過程で同社がたどり着いたのが、シリカエアロゲルという物質だ。いわゆる断熱材としてはさまざまなものが存在するが、EVにおける熱の有効利用のためにはさらに高機能な断熱材を開発しなければならないと同社は考えた。シリカエアロゲルは内部に微細な穴を数多く持つ構造で、穴が極めて小さいため熱対流現象が発生せず、非常に高い断熱性を有している。ただ、性能は優れているものの素材自体がふわふわの粉体のため扱いにくく、水に溶けにくい性質も相まって、そのままでは断熱材として製品化できなかった。

そこで同社はシリカエアロゲルを塗料化し、扱いやすさを高めることを発案する。粉状かつ水に混ざりにくい性質を持つ同物質を水に溶かすところでトライと検証を重ねた結果、同社が持つ高い材料技術で塗料化に成功し、「ファインシュライト」として製品化に至った。

断熱フィラー(シリカエアロゲル)
独自の高分子材料技術により、高密度な状態を維持したままでシリカエアロゲルの塗料化を実現した。

「ファインシュライト」は断熱性が高いことに加えて薄く、軽く、柔軟であり、さらに低温から高温まで幅広い領域で使えるため、EVやプラグインハイブリッド車(PHV/PHEV)など電動化車両を構成するさまざまな部品に貼り付けて、車内外の熱の出入りを効果的に遮断することができる。これによる電気の有効利用で走行距離延長に寄与するのはもちろん、車内の快適性向上、車両火災などの緊急時における乗員の安全確保にも貢献する。いうまでもなく、モビリティの電動化推進でCO2排出を削減し、カーボンニュートラルの実現にもつながる。

各種材料の熱伝導率
「ファインシュライト」は静止空気の熱伝導率0.026W/mKを下回る0.020W/mKを実現している。

さらに、「ファインシュライト」はモビリティ以外の用途でも活躍が期待されている。その一つが、工場設備のエネルギー消費抑制によるCO2低減だ。日本の工場は省エネの取り組みが進み、さまざまな排熱対策が実施されているものの、カーボンニュートラルの実現を想定するとさらなる改善が必要とされている。とはいえ工場設備の更新には大きなコストと手間が必要となるが、「ファインシュライト」は汎用製品としてシート状で提供されており、従来の設備に貼り付けるだけで排熱の抑制が可能になる。実際、高温になるアルミダイカスト保持炉の周囲に「ファインシュライト」を貼ることで、炉の表面温度を下げ、省エネとともに作業環境の改善ややけど防止などの安全性向上に取り組む工場の事例も出ている。

アルミダイカストメーカーの多田スミスでは、エネルギー削減と高温下での作業による離職率低減、やけど防止などの安全対策としてファインシュライトの採用を検討。炉のエネルギー削減(3.5%)や工場内エアコン費用削減(測定中)といった省エネ効果が期待されている。

このほか、新型コロナウイルス感染症拡大で需要が増えたフードデリバリー用として、食品を温かいまま届けるため配達バッグの底に敷く温熱パッドや、反対に新型コロナウイルスのワクチンを定温で運ぶ輸送用ボックス、アウトドア向けのクーラーボックスなどで「ファインシュライト」の採用が始まっている。いずれも、薄膜高断熱性を実現したことにより、配達バッグやボックスの設計を変更することなく使用できるため、利便性の高さもポイントとなっている。

社会環境や生活様式が大きく変わり、モビリティも激変する中、同社は組織改革も含めて対応に取り組んでいる。部署の垣根を越えて開発に取り組む新商品開発センターは、従来のプロダクトアウト型中心の開発から、マーケットイン型にも対応可能な組織への変身にトライしているところだ。CASEについてはA(自動運転)の分野でも、ゴムの技術を生かしたスマートラバーの活用でセンシング関連の開発を進めている。これからも同社の強みを生かした製品・ソリューションにより、脱炭素、モビリティ電動化に限らず、多様な環境・社会課題の解決に貢献していく考えだ。

住友理工
https://www.sumitomoriko.co.jp/
住友理工は1929年に創業し、名古屋市中村区に本社を置くモノづくり企業です。2014年に東海ゴム工業から社名を変更しました。自動車(モビリティ)分野では、振動を制御する世界トップシェアの防振ゴムのほか、ゴム・樹脂ホースや、ウレタン製の制遮音品・内装品を製造。自動車部品の開発で培った技術を生かし、インフラ・住環境、エレクトロニクス、ヘルスケアの各分野でも事業を展開しています。世界20ヶ国以上に広がるグローバルネットワークを活用して、“Global Excellent Manufacturing Company”を目指しています。

各社が取り組む社会課題

脱炭素 パネルイメージ

脱炭素

地球温暖化の原因となる温室効果ガスの実質排出量ゼロを目指す、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを紹介します。

サプライチェーン パネルイメージ

サプライチェーン

サプライチェーンのグローバル化や複雑化に伴い、企業にはサプライチェーン上で発生する課題への適切な対応が求められています。

新しい働き方 パネルイメージ

新しい働き方

新型コロナウイルスの感染拡大により多くの企業が従来型の働き方を見直したことで、働き方改革が加速しています。

健康 パネルイメージ

健康

新型コロナウイルスの感染拡大により、企業にとって従業員の健康への配慮はよりいっそう重要なテーマとなっています。

気候変動 パネルイメージ

気候変動

地球温暖化の進行はビジネス上の深刻なリスクを引き起こす可能性があります。そのため、企業には中長期的視点での戦略策定と具体的な対策が求められています。

モビリティの電動化 パネルイメージ

モビリティの電動化

環境負荷軽減への対応や社会的ニーズの高まりとともに、モビリティの原動力がガソリンから電気へと置き換わりつつあります。

コミュニティ パネルイメージ

コミュニティ

人と人のつながりであるコミュニティを再生・再構築することで社会課題解決に向き合う動きが活発になっています。

貧困 パネルイメージ

貧困

子どもの貧困問題への対応が喫緊の課題になるなど、現代の日本においても貧困は深刻な社会課題の一つとなっています。

次世代の育成 パネルイメージ

次世代の育成

日本では少子高齢化の進展に伴う労働力人口の減少により、次世代を担う人材の育成が急務となっています。

先端医療 パネルイメージ

先端医療

近年における医療の飛躍的な進歩には、大学等の研究機関はもとより、企業による最先端技術への取り組みが大きく寄与しています。

地産地消 パネルイメージ

地産地消

再生可能エネルギーを生かし、地産地消を通じて脱炭素に貢献しながら産業振興も目指す取り組みが各地でスタートしています。

食品ロス パネルイメージ

食品ロス

世界では食料生産量の3分の1に当たる約13億トンが毎年廃棄されているとされ、食品ロスの解決は一刻を争う課題になっています。

地球環境との共生 パネルイメージ

地球環境との共生

人と企業が地球環境との共生を図っていく上で、対応すべきさまざまな課題について、各社の取り組みを紹介します。

強靭性・回復力 パネルイメージ

強靭性・回復力

自然災害だけでなく、さまざまなハザードがあり、その姿は時代とともに変化し、激甚化もしています。それに負けない強靭性や回復力を持つしなやかさが求められています。

地方創生 パネルイメージ

地方創生

地域の資源を生かして産業を強化することで、地方の人口減少を克服し、持続的な社会を創生する取り組みを紹介します。

PageTop