
2006年10月28日、東京都港区の泉ガーデンギャラリーにおいて、住友グループ広報委員会主催の「住友文化フォーラム2006 〜この時代を私たちはどう生きるか〜」が開催された。
同フォーラムは1979年、80年代を「どう生きるか」をテーマにスタート。以後10回にわたって、各界の有識者をパネリストに迎えながら時代の生き方を模索してきた。1985年より一端中断されていたが、その意義が再び評価され、再開の運びとなった。
今回は「この時代を、私たちはどう生きるか」をテーマに、民族間の対立や経済のボーダレス化、高齢化や教育制度の衰退など、国内外で様々な問題が噴出する現在、日本人としていかに生きていくべきかを約3時間にわたって討議した。
パネリストは作家の堺屋太一(さかいや たいち)氏、評論家の大宅映子(おおや えいこ)氏、松本健一(まつもと けんいち)氏、文芸評論家の福田和也(ふくだ かずや)氏。
前半冒頭、進行役の堺屋氏は戦後の日本は近代工業社会を目指して官僚主導、一極集中の体制を進めてきたが、その価値観が大きく変動したと分析。以前は物量が多いことを幸せと感じる社会だったが、現在は満足度の大きさが幸福の尺度となる「知価社会」へ転換したとして、この新たな価値観の時代にふさわしい生き方について、パネリストとともに考えたいと語った。
昭和の政治思想家などの評論で著名な松本氏は、今後重要となる考え方は「私」から「公」への発想の転換ではないかと発言。戦後、日本人は戦前の「滅私奉公」的な生き方から、「私」という個人の権利、欲望を追求することによって現在の経済的繁栄を得てきたが、歴史的に見ても「私」のみを追求する文明はいずれ滅びる。満足度の高い社会と「公」という視点には関係があるとして、教育の重要性、地域互助などの充実が大切だと語った。
一方、先の道路公団民営化推進委員会委員を務めるなど、日本の構造改革にかかわってきた体験から、大宅氏は、「選択肢が多い社会」が満足度の大きい社会だとし、貧しい時代には国全体の底上げのために皆が均等であることが求められてきたが、多様化の進む現代では個人の意識が重要。誰かと較べなくても自分自身のモノサシを持ち、考え、選んだら自分で責任をとる成熟した個人が世の中を変えていくとした。
パネリスト最年少で活発な評論活動を展開している福田氏は、近代を大量生産、消費の時代とすれば、これからの時代のキーワードは「持続可能性」(サステナビリティ)ではないかとした。その時代モデルとして江戸の町を取り上げ、江戸が長期にわたって安定して発展した要因は、身の丈にあったエネルギー規模のコミュニティを維持し続けたことにあると分析。公権力の影響の少ない自治の進んだ地域社会をつくることが、次世代も視野に入れた満足度の高い社会につながるのではと結んだ。
休憩をはさんだ後半では、各発言に出てきた「個人」、「地域社会」、「教育」といったキーワードを切り口に、具体的な生き方を検討した。
これからの時代は、「物事の価値基準を経済的豊かさだけで計らない、欲望とともに理性や気概を持つ」(松本氏)姿勢や、「江戸の町にも通ずる、小さい規模の社会をつくる」(福田氏)が重要だとし、「イタリアのナポリがいい例で、住民は地元で働いて暮らして通勤地獄もなし、ストレスも少なく結果的に満足感が高い」(福田氏)。このような社会はインターネットなどのテクノロジーの力によって、実現可能だとした。
また、そういった社会を形成していく次世代への教育も「違いはある。あるほうが面白いという個人を尊重し、多様性を認める教育を進めていかなければ未来はない」(大宅氏)と語った。
トリを務めた堺屋氏は、「近代工業社会的生き方から脱出するには、自分の好きなものを探すことから始めればいい。好きという判断基準が自分のなかにできれば、他人と比較して満足感を測る必要もなくなる。好きなことは疲れない、疲れないから満足感が高く、持続可能である。さあ今すぐ好きなことを探してみよう」と締めくくった。
当日、50〜60代を中心に450名近く集まった参加者たちは、メモを取ったり、時折大きくうなずいたりしながら、各パネリストの発言に熱心に耳を傾けていた。主催の住友グループ広報委員会・井場満(いば みつる)事務局長は、「住友グループは各社ごとにあるいはグループとして様々なCSR活動を行っているが、活動がさらに活発になっているこの時代に、グループをあげて何か新しいことをやってみようと今回のフォーラムを企画した。この企画が成功したと評価できるのであれば、今後3、4回は継続したいと思っている」と語った。 |
| 
|
 |
 |
| 作家 堺屋太一氏 |
 |
 |
| 評論家 大宅映子氏 |
 |
 |
| 評論家 松本健一氏 |
 |
 |
| 文芸評論家 福田和也氏 |
 |
 |
住友グループ広報委員会
井場満 事務局長 |
|